@IDX:2300
@OFF:0x88
@SPK:
@JPN:　……あれから、３年が経った。
@ENG:

@IDX:2301
@OFF:0xb4
@SPK:
@JPN:　あの仕事のことは、今となっては懐かしい思い出の　１ページに過ぎない。
@ENG:

@IDX:2302
@OFF:0x108
@SPK:
@JPN:　滅多にない珍しい経験。
@ENG:

@IDX:2303
@OFF:0x12e
@SPK:
@JPN:　おかげで酒席での話のネタに困ったことはない。
@ENG:

@IDX:2304
@OFF:0x16a
@SPK:
@JPN:　……もっとも職場の同僚たちにとっては、いささか　聞き飽きた話になってしまったようだが。
@ENG:

@IDX:2305
@OFF:0x1dc
@SPK:
@JPN:　僕は今、あの志津江さんに紹介してもらった小さな　編集プロダクションで働いている。
@ENG:

@IDX:2306
@OFF:0x23c
@SPK:
@JPN:　編集者として採用されたはずが、ライターまがいの　ことや、カメラマンとしての仕事も、いつの間にか　引き受けさせられている。
@ENG:

@IDX:2307
@OFF:0x2c4
@SPK:
@JPN:　もともと入稿前は修羅場と呼ばれるほどの忙しさだ　が、色々と兼任させられている僕にとって、それは　まさに修羅場の最前線。
@ENG:

@IDX:2308
@OFF:0x34a
@SPK:
@JPN:　息つく暇もないほどの忙しさだ。
@ENG:

@IDX:2309
@OFF:0x38a
@SPK:
@JPN:　……結局、医者になる夢は諦めた。
@ENG:

@IDX:2310
@OFF:0x3ba
@SPK:
@JPN:　夢を捨てて就職を決意した時は、それまでの自分を　否定しているような気がして、激しく葛藤した。
@ENG:

@IDX:2311
@OFF:0x43a
@SPK:
@JPN:　しかし、本当は悩む必要などなかった。
@ENG:

@IDX:2312
@OFF:0x47c
@SPK:
@JPN:　『医者』というものに対する幻想。
@ENG:

@IDX:2313
@OFF:0x4ac
@SPK:
@JPN:　『医者』になりたいという強い想い。
@ENG:

@IDX:2314
@OFF:0x4de
@SPK:
@JPN:　それが徐々に薄れ始めていた。
@ENG:

@IDX:2315
@OFF:0x50a
@SPK:
@JPN:　そして……『医者』を目指すよりも、もっと大切に　したいもの。
@ENG:

@IDX:2316
@OFF:0x556
@SPK:
@JPN:　死ぬまで大事に守っていきたいもの。
@ENG:

@IDX:2317
@OFF:0x588
@SPK:
@JPN:　それが僕の中にしっかりと根ざし始めていた。
@ENG:

@IDX:2318
@OFF:0x5d6
@SPK:
@JPN:　初めから結論は出ていたのだ。
@ENG:

@IDX:2319
@OFF:0x612
@SPK:
@JPN:　僕の決断は間違っていなかった。
@ENG:

@IDX:2320
@OFF:0x640
@SPK:
@JPN:　だからこそ、手に入れられたものがある。
@ENG:

@IDX:2321
@OFF:0x676
@SPK:
@JPN:　だからこそ、今の僕がある。
@ENG:

@IDX:2322
@OFF:0x6a0
@SPK:
@JPN:　だからこそ、今の幸せがある。
@ENG:

@IDX:2324
@OFF:0x710
@SPK:　　　　　　　だからこそ
@JPN:…
@ENG:

@IDX:2325
@OFF:0x71e
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:2326
@OFF:0x72c
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:2327
@OFF:0x73a
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:2328
@OFF:0x748
@SPK:
@JPN:。
@ENG:

@IDX:2330
@OFF:0x869
@SPK:［女の声］
@JPN:　あなた、起きて！　今日、打ち合わせがあるんでしょ！
@ENG:

@IDX:2333
@OFF:0x8d3
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………ん。
@ENG:

@IDX:2335
@OFF:0x926
@SPK:［女の声］
@JPN:　起きなさいってば！　遅れちゃうわよ！
@ENG:

@IDX:2337
@OFF:0xa26
@SPK:［美和子］
@JPN:　……もう。どうせ起きられないの分かってるんだから、あんな遅くまで飲んでこなきゃいいのに……。
@ENG:

@IDX:2338
@OFF:0xab8
@SPK:
@JPN:　僕はこうして家族を手に入れることができた。
@ENG:

@IDX:2339
@OFF:0xaf2
@SPK:
@JPN:　あの夜の契り……あのアクシデントは、僕と彼女と　の絆をさらに強く太いものにしてくれた。
@ENG:

@IDX:2341
@OFF:0xc75
@SPK:［女の子］
@JPN:　まま～。ぱぱおきた？
@ENG:

@IDX:2343
@OFF:0xcd0
@SPK:［美和子］
@JPN:　ぜ～んぜんダメ。紗也香も起こすの手伝ってよ。
@ENG:

@IDX:2345
@OFF:0xd43
@SPK:［紗也香］
@JPN:　うん！
@ENG:

@IDX:2348
@OFF:0xe5f
@SPK:[\protag]
@JPN:　うぐっ……。
@ENG:

@IDX:2350
@OFF:0xeb2
@SPK:［紗也香］
@JPN:　ぱぱ～、おきてぇ～。
@ENG:

@IDX:2352
@OFF:0xf0d
@SPK:［美和子］
@JPN:　ほら、あなた。早くしないと、間に合わないわよ！
@ENG:

@IDX:2354
@OFF:0xf82
@SPK:［紗也香］
@JPN:　まにあわないわよ～！
@ENG:

@IDX:2355
@OFF:0xfca
@SPK:
@JPN:　真田さん……いや、美和子は、今では僕と同じ苗字　を名乗るようになっていた。
@ENG:

@IDX:2356
@OFF:0x1024
@SPK:
@JPN:　……籍を入れたばかりの頃は、癖が抜けずに、よく　『真田さん』と呼んでしまって、『美和子でしょ』　とたしなめられた。
@ENG:

@IDX:2357
@OFF:0x10b6
@SPK:
@JPN:　彼女は……僕の妻となり、僕の娘の母となった。
@ENG:

@IDX:2358
@OFF:0x10f2
@SPK:
@JPN:　……いや、ちょっと違うか。
@ENG:

@IDX:2359
@OFF:0x111c
@SPK:
@JPN:　『僕の娘の母になり、僕の妻となった』
@ENG:

@IDX:2360
@OFF:0x1150
@SPK:
@JPN:　これが正しい順番。
@ENG:

@IDX:2361
@OFF:0x1184
@SPK:
@JPN:　紗也香を産んでから少し落ち着いたが、相変わらず　僕の世話を焼くことに幸せを感じているらしい。
@ENG:

@IDX:2362
@OFF:0x11f0
@SPK:
@JPN:　もっとも、僕も世話を焼かれて嬉しいのだが……。　
@ENG:

@IDX:2364
@OFF:0x127b
@SPK:［美和子］
@JPN:　……もう。今日はせっかく紗也香と一緒にお弁当を作ってあげたのにね。
@ENG:

@IDX:2366
@OFF:0x1304
@SPK:［紗也香］
@JPN:　さやか、せっかくおべんとつくったのにね。
@ENG:

@IDX:2369
@OFF:0x1364
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………くすっ。
@ENG:

@IDX:2371
@OFF:0x13bb
@SPK:［紗也香］
@JPN:　あっ！　ぱぱ、わらった！
@ENG:

@IDX:2373
@OFF:0x141a
@SPK:［美和子］
@JPN:　さてはタヌキ寝入りだな？　もー、観念して起きなさーい！
@ENG:

@IDX:2375
@OFF:0x1497
@SPK:［紗也香］
@JPN:　たぬきさ～ん！　おきて～！
@ENG:

@IDX:2376
@OFF:0x14e3
@SPK:
@JPN:　可愛い盛りの紗也香と、最愛の妻、美和子。
@ENG:

@IDX:2377
@OFF:0x151b
@SPK:
@JPN:　彼女たち、家族に囲まれた生活……。
@ENG:

@IDX:2378
@OFF:0x154d
@SPK:
@JPN:　この生活を守るために、僕は今日も戦場さながらの　仕事場へと向かう。
@ENG:

@IDX:2379
@OFF:0x159f
@SPK:
@JPN:　布団への未練を断ち切って、僕は妻と娘におはよう　と微笑みかけた……。
@ENG:

